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12月18日、藤枝宿での食事
染飯、霰豆腐のみそ汁、鯛のすっぽん煮、利休玉子、山芋のみそ漬、わらび餅、
大根と人参の紅白膾は献立外の添え物
 藤枝の宿の献立は「染飯(そめいい)、霰豆腐のみそ汁、鯛のすっぽん煮、利休玉子、山芋のみそ漬、わらび餅」です。この献立は藤枝から浜松までの東海道の名物をまとめたものです。
 染飯は藤枝と次の宿場島田との間にある瀬戸村の名物として有名でした。江戸時代の染飯は山梔子(くちなし)米を浸してから蒸した黄色の強飯(こわめし)を、小判形に押し固め干したもので、携帯食として売られ、水や湯で戻して食べました。今回は粳(うるち)米を山梔子の実を浸した黄色い水で炊いた山梔子飯を作りました。
 すっぽんは、袋井と浜松の間の見付(みつけ)で、寛政年間(1789−1801)から名物となったものです。現在は高級食材なので、献立では鯛のすっぽん煮にしました。すっぽん煮はもとはすっぽんの肉を油で揚げてから、醤油・砂糖・酒などの調味料で煮たものですが、鯛・蛸・烏賊やこんにゃくなどの他の材料でも、同じ方法で煮たものをすっぽん煮と呼んでいます。
 わらび餅は金谷と掛川の間の日坂(につさか)の名物として、室町末頃から知られています。江戸時代にも日坂のわらび餅は有名でしたが、実際は葛粉で作った葛餅で、「物の名もところによるか日坂の蕨(わらび)のもちはよその葛餅」という歌もあります。わらびの根からとる澱粉は少量で稀少価値があり、現在でも安価なわらび餅はわらびとは無関係のようです。
 献立のうち、みそ汁の霰(あられ)豆腐、利休玉子、山芋みそ漬は名物ではなく、珍しい江戸時代料理として選んだものです。霰豆腐は水気を切った豆腐の賽の目切を、ざるに入れて振って丸くしたもの。利休玉子は卵をといてすり胡麻と調味料を加え、型に入れて蒸したもの。山芋みそ漬は、長芋の皮をむき、好みの味に調味したみそに漬けたものです。どれも簡単に作れる復活したい江戸料理です。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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