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 青物魚軍勢大合戦の図(あをものさかなぐんぜいをゝかつせんのづ)
 歌川広景
画 安政6年(1859) 財団法人 味の素食の文化センター所蔵
 上の錦絵は、擬人化された青物(野菜)と魚介類の合戦を描いたもので、安政6年(1859)に板行されています。安政5年には、致死率の高い疫病のコレラが長崎から侵入して日本中に伝染し、3年間にわたって流行し、「安政コレラ」と呼ばれました。
 この絵の青物はコレラにかからない食物、魚はかかりやすい食物を示しているともいわれています。
 人間以外の生物や無生物を擬人化して戦わせる主題は、異類合戦物として室町時代から物語や絵にとりあげられており、食物を擬人化したものでは、文明以前(1469以前)の成立といわれる『精進魚類物語』が知られています。この物語では納豆を大将とする精進軍が勝ち、魚類軍の大将鮭の大介は、鍋の城で討死しています。
 上の錦絵に登場するのは、右側の青物軍は上から藤唐士之助(とうもろこしのすけ)(トウモロコシ)、蜜柑太夫(ミカン)、唐辛四郎(トウガラシ)、芋山十八(ヤマノイモ)、松田茸長(マツタケ)、砂村元成(カボチャ)、藤顔次郎直高(トウガン)、大根之助二股(ダイコン)。
 右下から空豆之進(ソラマメ)、茄子三郎(ナス)、桑井永之進(クワイ)、甲斐武道之助(ブドウ)、宇利三郎(マクワウリ)、水瓜赤種(スイカ)、百合根十郎(ユリネ)。
 左側の魚軍は、右の方から鰈平太(カレイ)、ほうぼう小次郎(ホウボウ)、海底泡之助(カニ)、初鰹之進(カツオ)、佐々井壷八郎(サザエ)、蛸入道八足(タコ)、戸尾魚次郎(トビウオ)、鯰太郎(ナマズ)、味物鯛見(タイ)、しやち太子(シャチ)、大鰭鮪之助(マグロ)、ふぐ三郎腹高(フグ)。
 青物軍優勢の合戦のようです。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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