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京の着倒れ 大坂の喰倒れ 江戸の呑倒れ
歌川豊国(三代目)画  『魚づくし』組本社刊
絵の左下には「柳下亭種員狂誌」とあり、右下には「豊国戯画」とあります。京の着だほれ、大坂の喰だほれ、江戸の呑だほれとして絵に文章が添えられており、文章は戯文(ぎぶん)とよばれる滑稽(こっけい)を主にしたものです。戯文を書いた江戸後期の通俗小説家を戯作者(げさくしゃ)といい、柳亭種彦(1783−1842)は著名な戯作者ですが、よく似た名の柳下亭種員については不明です。なお柳亭種彦は歌川豊国(三代目)と提携した作品を多く残しています。
着倒れは、衣服にぜいたくをして財産をなくすこと、食い倒れは食べ物にぜいたくをして、呑み倒れは酒を呑み過ぎて財産をなくすことです。今回は食い倒れについて調べてみましたが『ことわざ大辞典』(小学館)には食い倒れだけで次のような14項目がありました。
「阿波の着倒れ伊予の食い倒れ」「因幡の食い倒れ」「越後の食い倒れ、上州の着倒れ」「江戸の食い倒れ」「大阪の食い倒れ」「尾張の食い倒れ美濃の差し倒れ」「関東の食い倒れ」「関東の食い倒れ上方の着倒れ」「紀州の着倒れ、水戸の飲み倒れ、尾張の食い倒れ」「桐生の着倒れ足利の食い倒れ」「堺の食い倒れ」「信濃の食い倒れ」「下総の食い倒れ、常陸の着倒れ」「備前の着倒れ因幡の食い倒れ作州の家倒れ」
上記のうち、差し倒れは帯刀にぜいたくをして、家倒れは住居にぜいたくをしての意味です。このように食い倒れの地域は全国的に分布しています。
大坂の喰たほれの文章の中には、江戸の松すしの出店、難波の松の尾の会席、えびす橋の大与(たいよ)、生玉の玉屋のそば、道頓堀からもらった菓子の折などが登場し、終りに「せんにくうたのがすしで、後にくうたのが菓子、くひものニト通りなら、すいもあまいも知りぬいた男じゃ」と結んでいます。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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