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6月25日、草津宿での食事
菜飯、豆腐田楽、すまし汁(鴨たたき・椎茸・青み)、集め膾(鯛・赤貝・うど・大根・人参・胡瓜・針生姜)、
銀鱈西京焼き、わかめ蒲鉾、香の物(白瓜)、葛切り、うばが餅
 草津宿での献立には、目川の立場の名物菜飯田楽と、草津名物のうばが餅が入っていますが、NO.230N0.93で解説しました。また、10回続いた「東海道五十三次の食文化」の会も最終回なので、宿場の名物ではありませんが、鴨のたたきのすまし汁、集め膾、銀鱈西京焼、わかめ蒲鉾、葛切りなど、江戸時代からの美味を加えました。
 鴨は江戸時代に最も好まれた鳥で、料理法も多く人気がありました。現在鳥肉を代表する鶏は、当時はあまり好まれなかったようです。集め膾は鯛・烏賊・赤貝その他数種の魚介類と、うど・せり・あさつきなどの野菜を下拵えして、煎酒酢で塩梅した膾で、丁寧に美しく作ると料理膾とよびます。野菜は大根や胡瓜なども使うと経済的で、復活させたい膾です。西京焼は西京みそ(甘味の強い白みそ)に魚肉を漬けて焼くもので、歌舞伎座厨房の西京焼は、みその調製に秘伝があるようで、定評のある美味です。
 わかめ蒲鉾は『料理早指南』(1801)に、墨流し蒲鉾の名で作り方があるものです。蒲鉾用のすり身に、さがらめを包み込んで蒸し上げ、小口から切ると墨流しのような模様になるところからの名ですが、わかめを用いたのでわかめ蒲鉾とよんでいます。
 葛切りは、江戸時代には葛粉を湯でねり薄くのばし、細く切って茹でたものの名でした。
 水繊(すいせん)は葛粉を水でといて水繊鍋(水繊用の四角の浅鍋)に薄く流し入れ、鍋底を熱湯に浮かべて半透明になったら、そのまま水繊鍋を熱湯中に押し入れて完全に糊化させ、これを冷水中に入れて冷やし、水中で糊化したものをへらではがして取り上げて細く切ります。現在はこの水繊を葛切りとよび名称が変化しています。出来たてを黒蜜をつけて賞味しましたが、歌舞伎座厨房特製の黒蜜が間に合わず、既製品だったのが残念でした。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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