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踊形容楽屋の図
歌川豊国(三代目)画 安政6年(1859) 国立国会図書館所蔵
 芝居小屋の楽屋の光景が描かれている絵ですが、絵の題には「踊形容楽屋の図」とあります。「踊形容」とは何かを『日本国語大辞典』で調べてみましたが見当たりません。そこで、例によって国立劇場の石橋先生に教えていただきました。
 「踊形容」は「踊りのような姿をしたもの」というような言葉で、歌舞伎や芝居と同義語に使われています。歌舞伎と言わずに踊形容と言い換えたのは、天保(1830−44)の改革での歌舞伎狂言弾圧のためかとも考えられますが、この言葉が使われているのは安政年間(1854−60)の初め頃からなので、あるいはしゃれた言い方なのかも知れませんということでした。
 絵の人物は7人ですが、左から曽我十郎の扮装の二代目澤村訥升(のちの四代目助高屋高助)、次は訥升の付き人らしく、3人目は三代目市川市蔵。中央の左の馬方の扮装は中村鶴蔵(のちの三代目中村仲蔵)、次の女形は三代目岩井粂三郎(のちの八代目岩井半四郎)。右側の朝比奈の扮装は中村福助(のちの四代目中村芝翫)、右端が河原崎権十郎(のちの九代目市川團十郎)です。
 さて、中央に見える料理ですが、大皿は刺身のようで赤と白の2種類があります。『守貞謾稿』(1853)の中に、鯛や鮃(ひらめ)などの白身の刺身と、鮪などの赤身の刺身を2種類並べて盛るのを作り合わせというとあり、これはその一例のようです。
 手前にある鍋は、NO.47の美女と鍋料理の絵の鍋と同じです。刺身の皿の向こうにある注ぎ口と蓋のある円筒形の器は、酒の燗
(かん)をするチロリですから、これから刺身と鍋料理で、楽屋での酒宴が始まるのでしょうか。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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