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広重魚づくし さば・かに・朝顔
歌川広重画 国立国会図書館所蔵
 サバといえば秋サバを連想し、朝顔との取り合わせは季節が合わないように思います。調べてみると歳時記ではサバは夏、秋サバは秋の季語になっており、江戸時代料理書でも夏の献立にサバが使われています。『魚鑑』(1831)には「鯖は四時常にあり、春より秋のすへまで盛(さかり)なり」とあります。サバにはマサバとゴマサバの2種類があり、上の絵のサバはマサバのようです。マサバは日本近海では春から夏にかけて北上し、秋から冬に南下し、南下する脂ののった秋口のものを秋サバと呼んでいます。
 刺鯖(さしさば)は現在では忘れられた名ですが、江戸時代には7月15日の盆の贈り物として欠かせないものでした。『本朝食鑑』(1697)によると、サバの腸と鱗をとり背開きにして塩漬にしたもので「一つの頭をもう一つの頭の鰓(えら)の間に刺し入れ、二つを相連らねて一重にし、これを一刺という」とあります。背開きの2枚を重ねた塩乾物で、串で刺したものではないようです。『柳多留拾遺』の宝暦13年(1763)の句に「心中は刺鯖からのおもひ付」というのがあります。
 絵の上部には「大江戸や見てめざましき魚市もつき折々の花にこそあれ」とあります。朝顔は江戸の庶民に好まれ、とくに文化年間(1804−18)には大流行し、入谷の朝顔市はその名残といわれます。朝顔の種子が中国から渡来したのは奈良時代の末頃らしく、薬用植物として栽培され、観賞用になったのは江戸時代からで、栽培法の発達で花色や形も多彩な朝顔がつくられました。
 カニはガザミ、通称ワタリガニです。『和漢三才図会』(1712)にはガザメとして、大きなものは味がよく、塩水でゆでると赤くなり甲をとり白肉を食べる、黄(こ)は甘く美味とあります。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
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