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東海道五十三次の内 赤坂
歌川広重画 保永堂版 1833年 国立国会図書館所蔵
 東海道の宿場は御油の松並木を過ぎると間もなく赤坂で、「夏の月御油よりいでて赤坂や」の芭蕉の句もあります。この二つの宿場は飯盛女(遊女)が多いことでも知られており、赤坂の旅籠を描いた上の絵にも、右側の部屋には3人の飯盛女がいて、2人は化粧中のようです。左側の部屋には、横になって煙草を吸う客が見え、膳を運んできた女中がいます。
 『誹風柳多留(はいふうやなぎだる)』に、「名物をくふが無筆の道中記」とあるように、飲食は旅の大きな楽しみでしたが、記録した道中記は僅かしかありません。
 その中で、嘉永元年(原文には弘化申の年とありますが、1848年は2月28日に嘉永に改元)の春に、讃岐国(香川県)の砂糖商人らしい某が、志度の浦の講中20人ほどと、約2ヶ月の伊勢参宮の旅に出た時の記録『伊勢参宮献立道中記』は、道中の飲食について詳しく、貴重な資料です。その中から旅籠の食事2日分を紹介しましょう。

−奈良の旅籠小力屋(3月20日宿泊)−
夕食 菓子椀(みつ葉・椎茸・竹の子)、茶碗(麸・すり生姜・うど)、みそ汁(青み)、香の物・飯。
朝食
(21日)
椀(芋・ぜんまい・ゆば)、猪口(みづから(昆布)と大根の三杯酢)、みそ汁(青み)、飯。
昼食 菓子椀(うど・玉麸・生姜)、猪口(煮豆)、みそ汁(青み)、飯、香の物。
−三輪の旅籠高田屋(3月21日宿泊)−
夕食 椀(焼豆腐・椎茸・竹の子)、猪口(したし)、みそ汁(焼豆腐あられ)、飯、香の物。
 基本は飯、汁、香の物で、煮物(菓子椀や椀)や猪口がつき、香の物を加えて一汁三菜です。この例は質素で魚介類がありませんが、猪口でなく焼魚や煮魚の皿が普通でした。
 監修・著 松下幸子千葉大学名誉教授
>>松下教授プロフィール
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